
ビールに独特の爽快な香りと苦味をもたらす原料として知られるホップ。北海道上富良野町は、日本でも有数のホップ産地として知られています。
今回水戸青果は、サッポロビールと名店「飯田商店」による限定コラボレーションイベント(限定ビールと限定混ぜそばのペアリング企画)に合わせ、混ぜそばのトッピングとして使用するホップを選定するため、上富良野で有機ホップを手がけるNishio Farmさんを訪ねました。
ビールづくりではなく、あえて「食用」として有機ホップと向き合う生産者の想いと、青果の卸として私たちが大切にしている「食材の可能性を広げる」現場のリアルをお届けします。
ビール用ではなく「食用」として。12品種の有機ホップへの挑戦

一般的なホップ栽培のイメージといえば、広大な圃場からビール工場へ原料として出荷される姿かもしれません。しかし、Nishio Farmさんの畑は目的が異なります。
――「うちはビール自体は醸造していません。農薬や化学肥料に頼らないオーガニック栽培にこだわり、約12品種のホップを『食材・ハーブ』として育てています」
畑は人の手が行き届くコンパクトな面積。収穫されたホップは、フレッシュなまま飲食店へ届けられるほか、乾燥させてお茶の原料として出荷されたり、羅臼昆布の旨味と道産塩を合わせた自家製の「ホップソルト」に加工されたりしています。
ビールの原料としてではなく、食用として料理の現場へ届けること。それがNishio Farmさんのホップづくりの根底にあります。
虫や天候と対峙する――有機栽培の過酷さと収穫の刹那

有機でのホップづくりは、自然の猛威との真剣勝負です。農薬に頼らない畑には、多くの虫が集まってきます。
――「今年は北海道全体で気温が低く、収穫時期が例年より2週間ほど早まりました。特に苦戦したのが虫です。ホップを食い尽くしてしまうコガネムシが大量発生し、収穫袋を持って手作業で捕獲する日々が続きました。さらにホップを好むクジャクチョウの幼虫への対応や、開花時期の長雨による病気の影響など、気の抜けないシーズンでした」
さらに、ホップの収穫適期はわずか3〜4日程度。時期を逃せば香りが抜けて枯れてしまい、早すぎれば十分な香気が乗りません。
そうして見極められ、手摘みされたホップを割ると、中には「ルプリン」と呼ばれる黄色い粒(精油樹脂)がびっしりと詰まっています。指先で揉み込むと、強い粘り気とともに弾けるような鮮烈な柑橘の香気――まさに天然のハーブそのものの力強さを感じさせます。
「アルファ酸」から読み解く、料理とのペアリング
――「例えば、すすきのの老舗和食店では、カウンターの天ぷらコースでホップを使っていただいています。天ぷらは苦味がダイレクトに出るので、お茶用のアルファ酸が低い品種をお送りしました。天ぷら屋さんは10秒ほどで揚げると聞いています。天ぷらにすると、品種による違いがはっきり出るんです 」
Nishio Farmさんでは、料理人やシェフへホップを提案する際、「アルファ酸」の数値を一つの目安にしています。ビールの苦味の元となるこの成分は、料理への応用においても重要な鍵を握ります。
- 柑橘・フルーティー系(カスケード、センテニアルなど)
別名C系ホップと呼ばれ、頭文字が「C」で始まる、柑橘系や松のような爽やかな香りとしっかりした苦味があるアメリカ産ホップの総称です。爽やかなグレープフルーツのような香りが特徴。カスケードの進化版とも言われるセンテニアルは、香り高さとしっかりとした風味を併せ持ちます。
- 低苦味・お茶用(ティーメーカーなど)
お茶用の品種で、アルファ酸が極めて低く、苦味をほとんど感じません。
- トロピカル系(ナゲット、ビスタなど)
トロピカルな香りの系統とされる品種です。一方でアルファ酸が高く苦味が強いため、料理にはそのまま使いにくく、現在の出荷先はクラフトジンの香りづけなどに限られています。
つくり手の想いを、一杯の料理と未来の食卓へ

今回のコラボレーション企画において、濃厚な限定混ぜそばのアクセントとしてどの品種が調和するのか。畑の中で生のホップを手に取り、香りや苦味のバランスを確かめながら吟味が進められました。
ホップは単なるビールの原料という枠を超え、料理人の創造力を刺激する奥深い「農産物」です。
天候や害虫の被害を乗り越え、手間を惜しまず育てられたNishio Farmさんの有機ホップ。
水戸青果はこれからも、生産者のこだわりや畑の物語をしっかりと汲み取り、料理人の皆様、そしてその先にある食卓へと価値ある食材をお届けしてまいります。
イベント概要:畑の息吹は、東京・恵比寿の特別な舞台へ――「YEBISU × 飯田商店」の共創

今回、私たちがNishio Farmさんで重ねたホップの選定は、ひとつの特別な挑戦へと繋がっています。
それが、サッポロビールのプレミアムブランド「ヱビス」と、ラーメン界の頂点に君臨する名店「飯田商店」による共鳴共創イベント『YEBISU × 飯田商店 SPECIAL COLLABORATION 2026』です。
「ビールとラーメンの最高峰が織りなすペアリング」をテーマに掲げるこの試み。会場となる恵比寿の「YEBISU BREWERY TOKYO」では、飯田商店店主・飯田将太氏と共に創り上げた限定醸造ビール『太乙麦香(たいいつばくこう)』とともに、この日のためだけに考案された特製まぜそばが振る舞われます。
ゆっくりと豊かな時間を楽しんでもらうために選ばれた「まぜそば」には、ホップの煮汁を練り込んだ特製麺が用いられるなど、ビールの主原料である麦とホップをラーメンの技法で再解釈する徹底したこだわりが注ぎ込まれています。そしてその一杯の仕上げとして、丼の上に鮮烈な香りを添えるのが、今回厳選したNishio Farmさんの有機ホップです。
【イベント開催概要】(※完全予約制)
| イベント名 | YEBISU × 飯田商店 SPECIAL COLLABORATION 2026 |
| 開催日程 | 2026年11月19日(木)~21日(土) |
| 会場 | YEBISU BREWERY TOKYO(東京都渋谷区恵比寿 / 恵比寿ガーデンプレイス内) |
| 内容 | オリジナルヱビス『太乙麦香』と飯田商店特製「まぜそば」のペアリングコース |
| 公式サイト | https://www.sapporobeer.jp/yebisu/communication/iidashouten-collaboration/ |
素材の可能性を信じ、生産者と料理人を結ぶ
単なるビールの苦味付けにとどまらず、料理人のインスピレーションを刺激し、ひとつの独立した「食材」として丼の上で花開くホップ。
北海道の冷涼な気候のもと、害虫や天候と対峙しながら、農薬や化学肥料に頼らない栽培を貫くNishio Farmさんの情熱。そして、その素材の真価を見抜き、かつてない食体験へと昇華させる料理人の技――。
生産者が土と向き合って生み出した作物の声を聞き、そのストーリーとともに最高の舞台へと繋いでいくことこそが、私たち水戸青果の使命です。
北海道の大地が育んだ香りの一粒が、日本の食文化を牽引する匠たちの手によってどんな感動を生み出すのか。水戸青果はこれからも、生産者の皆様とともに、まだ見ぬ食材の可能性を拓く挑戦を続けてまいります。
